21世紀訳『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』を紐解き、フランクリン・プランナーのポテンシャルを最大限に引き出す

フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社
取締役副社長
竹村富士徳

フランクリン・プランナーは「7つの習慣」を実践する第四世代の手帳です。その土台となる『7つの習慣 成功には原則があった!』が、スティーブン・R・コヴィー博士没後1年を期に新たに訳し直され、『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』として刊行されました。日本語に翻訳されて17年、なぜ新たに訳し直す必要があったのか、フランクリン・プランナーの活用法などについて、新訳プロジェクト統括責任者であるフランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社取締役副社長 竹村富士徳氏に語っていただきました。

●激動の時代だからこそ人格主義!

日本語訳発刊から17年目、168万部を超えた『7つの習慣 成功には原則があった!』を、新たに訳し直すことを決断しました。コヴィー博士の『7つの習慣』本来の意図である「人格主義の回復」と、博士の熱い想いをお伝えしたいからに他なりません。

コヴィー博士は『7つの習慣』執筆のために、米国建国後200年間の文献調査を行い、最近の50年間は個性主義、最初の150年間は人格主義に基づいていると言われています。最近、「7つの習慣」をご存知の方々にお会いすると、どちらかというと個性主義的に「7つの習慣」を捉えておられる方が多いようです。「7つの習慣」をテクニックとして、「Win-Winを考えたら、主体性を発揮したら、ミッション・ステートメント書いたら、傾聴したら成功できる」という捉え方です。

また、『7つの習慣』を知らない方々が増えていること、学ぼうとしている方々も挫折していること、知っている方の中でもコヴィー博士の本来の意図がなかなか伝わっていない、ということを感じていました。

今回の新訳発刊に際して著名な方々にインタビューした中で、「実は副題が今までオリジナルのものではなかったこと」に対する反応に、意を強くしました。それは「人格主義の回復です」とお話すると、皆さん「なるほど!」とうなられるのです。この言葉を聞いて、時代の流れに合っていると確信しました。「人格主義の回復」はコヴィー博士本来の意図であり、人格主義を中核に据えた『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』を世に出すことは非常に大きな意味があると考えています。

●今こそ変わらない軸が求められている

人格主義の土台となるのが、時代を通して変わらない軸となる原理原則です。コヴィー博士は、『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』に記した「はじめに」の中で、「時代が変われば『7つの習慣』も変わるのか」という問いに対して、「これは原理原則なので、時代が変わるからこそ、逆に変わらない軸となり支えとなっていく」と答えています。

近年、日本も大きな変化の渦の中にいます。そのひとつがリーマン・ショックです。リーマン・ショックによって、アメリカ経済の崩壊が日本に伝わると同時に、戦後欧米に追いつき追い越せを続けてきた日本が、そもそもそれが正しかったのかという反省につながりました。さらに、3.11東日本大震災を境にして日本人の価値観が変わり、本当に大切なことは何かを考え始めたのだと思います。

●「7つの習慣」実践に最適なフランクリン・プランナー

今回原書を改めて読み、フランクリン・プランナーの先進性に驚いています。博士は『7つの習慣 最優先事項』を書かれたように、タイム・マネジメントに関する本質、エッセンスをフランクリン・プランナーに詰め込んでいるからです。完訳版では巻末付録として、現行版で省略した第Ⅱ領域に関する記述を追加しています。

これは、研修ではあまり触れていない非常に示唆に富んだ現実的なものであり、さすがと言える内容です。

さらに、時間管理ツールとして第一世代〜第四世代を紹介しており、原書発刊から四半世紀も経ちますが、未だに第五世代ツールは登場しておらず、改めて第四世代が終着点であることが確認できました。プランナーは完全な第四世代ツールであり、その先進性には驚きます。タイム・マネジメントツールはローテク系からハイテク系へと変わったにもかかわらず、その指針、原理原則を体現しているのは、今でも第四世代のフランクリン・プランナーしかないと確信しました。

日本において第四世代手帳はあまり普及しておらず、目標に基づいて日々の優先順位をつける第三世代が未だに多いようです。ただ、第三世代を理解した方はその限界に気づき、第四世代を再発見している方も多くいらっしゃいます。さらに、第四世代のプランナーは、「7つの習慣」を実践する様々な工夫が施されており、日々の活動に「7つの習慣」を生かすことができます。ですから、『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』をお読みいただいて、本質的な意味で「第四世代とは何か」をご理解いただき、プランナーのポテンシャルを最大限引き出していただければと思います。

●「一週間コンパス」の活用がキーポイント

フランクリン・プランナーの基軸は「一週間コンパス」です。「一週間コンパス」を効果的に使うには、ミッション・ステートメントを書き、目標も設定しなくてはなりませんが、完訳版ではそうした例も示してありますので、参考にしていただければと思います。

プランナーユーザーの手帳を見せていただくとき、私が最初にチェックすることは「一週間コンパス」を使っているか、使っていないかという点です。

使っていない方はその場で、これは第二世代の使い方だとわかります。もう一つは、「一週間コンパス」を「毎週使っているか」という点です。同じものを差しっぱなしという方も、第二世代の使い方になっているのは一目瞭然です。「一週間コンパス」を活用してこそ、第四世代手帳フランクリン・プランナーが効果的であることを実感していただけるでしょう。

●「時間管理のマトリックス」を身につける

次に第3の習慣の中の「時間管理のマトリックス」も、プランナー活用のキーポイントです。「時間管理のマトリックス」は横軸の緊急軸、縦軸の重要軸から成ります。重要事項は、「時間管理のマトリックス」の第Ⅰ領域・第Ⅱ領域を含めた部分ですが、コヴィー博士が重要視しているのは第Ⅱ領域(最優先事項)です。完訳版では第3の習慣を「最優先事項を優先する」としました(後述)が、最優先事項を確実に実行することがポイントになります。

第一世代、第二世代、第三世代の手帳では、計画を立て優先順位をつけますが、第Ⅰ領域、第Ⅲ領域、第Ⅳ領域の事柄が中心です。しかし、効果性を高め、また人間関係を豊かにし、私たちのミッションをイメージしながら、主体的な生き方ができるのは、第Ⅱ領域の中に含まれている事柄なのです。それをツールとして習慣化できるのがフランクリン・プランナーであり、その鍵が「一週間コンパス」と「時間管理のマトリックス」の活用です。

●「7つの習慣」の実践は「刃を研ぐ」ことから始める

しかし、スキル的な部分で「7つの習慣」の実践が難しいのも事実です。目の前の事柄に追われてしまい、第Ⅱ領域の活動を先送りしがちです。自分の決めた第Ⅱ領域の活動を「一週間コンパス」で調整しながら、どちらに向かって進むのかを描きながら進んでいくことが大切です。

「なぜ時間に追われるのか」。それには2つ問題があります。1つは、自分自身に対して誠実になりきれない、つまり意志の弱さです。次に、自分の「影響の輪」の線上にある事柄に影響されて、自分をコントロールできないという点です。では、どうすればいいか。自分自身に誠実で「影響の輪」の中で取り組めること、日々実践できる第Ⅱ領域活動には何があるかを考えると、実は第7の習慣「刃を研ぐ」ことなのです。

「刃を研ぐ」の「肉体、知性、精神、社会・情緒」の中で、「肉体、知性、精神」は自分の「影響の輪」の中にあり、また「私的成功」の中に含まれています。ですから、この3つに毎日取り組むことが「私的成功」となります。毎日自分との約束を守り続ける「刃を研ぐ」活動は、基本的に第Ⅱ領域の活動です。

自分との約束を守り続けることによって、自分の中の誠実さという人格を身につけることができます。自分の誠実さを高めることで、他人に対して、より影響を及ぼすことが可能になります。「7つの習慣」を実践することが難しいと感じたら、まず「刃を研ぐ」からスタートするのが良いでしょう。あと、第Ⅱ領域については完訳版の「付録B」が充実していますので、参考にしてください。

●原著に忠実に、かつ老若男女にもわかりやすい翻訳

フランクリン・プランナーのポテンシャルを最大限引き出すためのヒントが、『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』に掲載されていますので、是非とも手にとっていただければと思います。

では、完訳版のポイントについてご紹介しましょう。

新たに翻訳し直す際の基準は、「とにかく原書に忠実」ということです。とは言いながら読者は日本人ですから、日本語としてわかりやすいことが大前提となります。この2つを軸に、習慣名も含めて聖域は持たずに完全にゼロベースで、コヴィー博士が本当に伝えたいことが伝わる訳になるよう徹しました。

もう1つの指針として、現行版はビジネス・パーソンを意識して翻訳され、それはサブタイトル「成功には原則があった!」にも反映されていますので、今回はより幅広い読者にも理解できるわかりやすい訳を心がけました。

私たちは、「7つの習慣」を子ども向けに展開した『7つの習慣ティーンズ』や、より一般読者向けに展開した『まんがと図解でわかる7つの習慣』など、かなりプロダクトラインも増え、多岐にわたって『7つの習慣』を紹介しています。

そういう点でも、老若男女すべての日本国民が親しめる『7つの習慣』になるよう意識しました。

また、コヴィー博士本来の意図を伝えるために、習慣名も2つを除いて変えました。まず第1の習慣「主体性を発揮する」は原著では「Be Proactive」であり、「Be=ある」というニュアンスを生かして「主体的である」と訳し直しました。

そして、第2の習慣は原著の「Begin with the End in Mind」に込められたコヴィー博士の意図を汲んで「終わりを思い描くことから始める」に変更しました。第3の習慣も原著の「Put First Things First」に込められた想いを生かして、「最優先事項を優先する」としました。第4の習慣「Win-Winを考える」は変わりません。

大きく変わったのが第5の習慣です。原著の「Seek First to Understand, Then to be Understood」の「Seek」の「求めていく」というニュアンスを出して「まず理解に徹し、そして理解される」としました。第6の習慣は今では「シナジー」が一般的であり、また原著の「今生み出す」というニュアンスを生かして「シナジーを創り出す」に改めました。最後に第7の習慣「刃を研ぐ」は現行通りです。

『完訳 7つの習慣』とフランクリン・プランナーを活用することで、未来のあなたを創っていただければ幸いです。(談)

完訳 7つの習慣 人格主義の回復

四六判 564ページ
品番 60008
定価 2,200円(税別)
キングベアー出版

日本語訳が発刊されて17年、ビジネス書としてまた人生哲学の定番として親しまれています。今回スティーブン・R・コヴィー博士没後1年を期に、『7つの習慣』が本来持つ「人格主義」に基づき、原書に忠実に訳し直しました。よりわかりやすく、理解しやすい完全訳になっています。豊かな人生を望むすべての人にお届けします。

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