プロフェッショナル活用事例 吉田穂波

「7つの習慣」を実践し、人生に取り入れるための「フランクリン・プランナー」

吉田穂波どれだけ仕事が忙しく、育児に忙殺されても、「私にしかできないことをやる」「できる」と力強く語る吉田穂波さん。その吉田さんが悩んでいた時期から立ち直ったきっかけになったのが書籍『7つの習慣』でした。

「7つの習慣」が提唱する原則を活用した、吉田さんの「本当に大事なことを実現する」ための考え方、方法についてお話を伺いました。

国立保健医療科学院
産婦人科医師/医学博士/公衆衛生修士
吉田穂波様

自分の反応は自分で選択できる。自分にしかできないことをやる。

私が第一子、第二子を出産し、患者さんと子どもの間、仕事と家庭の間で板挟みになっているような感覚を持っていた頃に、『7つの習慣』に出合いました。

そのとき、とても心に響いたのが、「反応は選択できる」ということでした。

その頃の私は、すべて自分でやろうとしていました。たとえば、子どもが保育園から帰ってきて、回らぬ舌で「今日もあんなことがあった」「誰々とあんなことしたの」とすごく私に話を聞いて欲しがっていても、私は「待って待って」と言いながら料理を作ったり、8時には寝かせなきゃいけないと思って焦ったり、時間に追われながらストレスを感じていました。そして、こうしてストレスを感じるのは自分のせいではなく周りの環境や条件にあるのだと考えていました。でも、『7つの習慣』で、ものごと→ポーズボタンを押す→反応を選択する、という箇所を読んで、自分のものごとの捉え方や自分の考え方は変えられるし、そのことで、人生も切り替えられるかもしれないと思いました。

私が『7つの習慣』から学んだことのひとつは、母である私にしかできないこと、私がやりたいことは自分で選択できるし、優先順位をつけることができるということでした。

私にとって優先順位が高いけれども緊急ではない“第Ⅱ領域”-それは、子どもの目を見て、話を聞いて、「お母さんは、あなたのことが大好き、大好き」「あなたはとても大事な存在」と伝えることでした。そしてそういうことに時間を割きたいなら、権限委譲できることはアウトソーシングしようと決めました。

自分で選択して、優先順位をつけることが出来る、ということに気がついたとき、私の人生が大きく変わりました。仕事も育児も家事もたくさんあるけれど、母である私がしたいこと、母である私しかできないことに時間を割こう、と思えるようになったのです。

1日24時間のうち4時間しか子どもと接する時間がないのだと気づいた時、子どもたちを脇へ押しやって家事をして、朝晩共にあわただしい時間帯をこなすのではなく、子どもたちに「あなたは世界でただ一人の特別な存在だよ」「あなたがお父さんとお母さんの宝物だよ」と伝える方に力を注ごうと思いました。

コヴィー博士は、家族における信頼関係や人間関係をとても重視していますが、私も家族の存在が仕事の基盤になると心から思います。家族のまとまりや夫婦仲がすべての基盤で、そこがよくならないと、仕事においてもうまく力が発揮できません。

自分にしかできないことをやる、それが第Ⅱ領域の活動

講演などで、「どうやったら目標達成できるのか」とたくさんの人から聞かれます。

ビジネス・パーソンであれば、誰でも自分でタスクを洗い出し、「TO DO リスト」をつくり、いつまでに何をすればいいのかスケジュールに落とし込むということを行っていますし、これはどんなビジネス書にも基本的なこととして書いてあります。

でも、「7つの習慣」が素晴らしいのは、そのTO DOリストを作るだけではなく、本当に重要なことに対して優先順位づけをするということです。そのステップを踏まないと、私たちは第Ⅰ領域のこと(緊急かつ重要なこと)だけで毎日疲れ果ててしまいます。

第Ⅰ領域の事柄というのは、「やらされ感」満載のことばかりで、この領域の事柄ばかり行っていると、どんどん消耗していきます。

「7つの習慣」では、そうではなく、「第Ⅱ領域(緊急ではないが重要なこと)にもっと時間を割きなさい」と教えており、自分にしかできないこと、自分が心をこめて行いたいことを優先することで、自分のモチベーションが上がり、満たされるのです。

なぜなら、第Ⅱ領域のタスクというのは単なるタスクではなく、ここを強化すればするほどエンパワーメントされて、自分のできること、エフェクティブなことが増えていくからです。

たとえば、「仕事に復帰したい」とか、「仕事はしているけど子どもを持つかどうか悩んでいる」という方に対して、「タスクが増えれば増えるほど、広がれば広がるほど、どんどん負荷が増えて時間が取られていくのではなく、あなたにこそしてほしい、あなただからできると思うような仕事をすることで、もっともっと自分がパワーアップし、主体的に働ける人になるのです」とお伝えします。

そういう話をすると、なるほどと納得いただけますし、自分だからこそできること、自分にしかできないことってなんだろう、と、考えていくと、もっともっと力が湧いてきます。

ですからできるだけ、他の方がした方がうまくできる仕事は、気持ちよく任せましょうとお話ししています。

これは、以前使っていたフランクリン・プランナーに書き込んだものですが、自分なりに第Ⅰ領域、第Ⅱ領域にあたる事柄を定義しています。

自分で判断基準を決めることは大切なことで、私はこのように手帳に書き込んでいます。

「任せられること」「やめられること」「受け身なこと」は、第Ⅰ領域に入ると思いますし、第Ⅱ領域は、「人生の戦略」であり、「人生の質を上げること」であり、「希望を大きくすること」「より大きな冒険ができること」などではないかと思っています。

私がラッキーだったのは、『7つの習慣』と並行してコーチングを学んだことでした。

コーチングは、その人の力を引き出したり、目標達成をお手伝いするためのスキルですが、「あなたがすごく力を注いでいること、あるいはいつも先延ばしにしているけど、いつかやりたいと考えていることは何ですか?」と、第Ⅱ領域活動を考えるための質問をよく投げかけます。

あるいは、「ほかの人に任せたいことは何ですか?」「誰かにやってほしいことは何ですか?」「受け身でやらされ感満載なことはありますか?」と第Ⅰ領域のことを考えていただいたりもします。

スケジューリングを行うときには、手帳を縦型記入式(バーチカルのタイプ)のものにして、自分の自由になる時間を先に囲ってしまって、第Ⅱ領域の活動を先に予約するようにしています。

そうはいっても、私のやり方もまだ完ぺきではありませんので、いつも手帳のこのメモを持って、見返しながら、「今すべきか? 任せるべきか? 受け身か? やらされ感か?」ということを確認しています。

何でも自分でやる必要はない。他人に委任することで可能性が広がる

もうひとつ私が『7つの習慣』から学んだことは、「何かを成し遂げようとするとき、ほかの人の力を借りなければできない」ということです。私たち日本人はずっと「自立」を教えられてきました。ほかの人に迷惑をかけてはいけないという考えがしみ込んでいます。

そして、自立イコール何でも自分一人でできる、誰にも頼らないと思いがちで、実際に大学で教えていても、「誰かに頼むのはみっともないし、かっこわるいし、恥ずかしい」と考えている学生はたくさんいます。

しかし、本当の優先順位を考え、実行するのであれば、「どんどん任せる、権限委譲する、どうやったら第Ⅰ領域を減らすことができるか考える」ということが大切になります。

特に、復職前の方や家庭も仕事も忙しいワーキングママに対しては、優先順位づけの重要性と、ほかの人の助けを借りることではじめて成功できる、ということをお話ししています。

私は、拙著『「時間がない!」から、なんでもできる(サンマーク出版)』の中で、「受援力」と書いていますが、「I(アイ)メッセージを使おう」「感謝の言葉を使おう」「前向き質問を使おう」「断られてもフィードバックだと思おう」などは、コーチングの中から学んだことばかりです。仮に悪いところが見つかっても、そこで軌道修正すればいいし、頼んでみて断られたらそれをフィードバックだと思えばいいのです。

断られるのが怖いと考える人は多いのですが、「ほかの人に任せる、頼む」ということは、子どもができた人やリーダー格になった人には、とても大事なことだと思います。

自分の可能性を広げるために「影響の輪」に集中する

私がキャリアや子育てで悩んでいたときは、土俵の隅っこに自分がいるという感覚でした。

『7つの習慣』を何度も読んで、「主体的(Proactive)になるとはいつでも自分が土俵の真ん中で、自分を中心とした土俵で戦っていくということなんだ」、そういう気持ちになったのを覚えています。

『7つの習慣』にある、「影響の輪」の考え方も常に意識しています。このように、定期的に、フランクリン・プランナーのメモ部分に自分の「影響の輪」の中でできることを書くことで、意識するようにしています。

かつては、関心の輪も影響の輪も狭かったと思うのですが、『7つの習慣』のおかげで、今は、両方とも広がってきたような感じがします。

たとえば、以前少子化を研究していたとき、自分は少子化について「もっと発言したい」と思っていました。でも機会もないので、とにかく自分が勉強して影響の輪を広げていきました。すると現在では、地方自治体のアドバイザーや政府の委員というかたちで、どんどん自分の意見が言えるようになりました。

影響を与えることができないことに関してはできないと諦めて、できることだけに集中することで、できることがどんどん増えて、影響の輪が広がっていくのだと思います。

昨今、女性の働き方においても、大きな変化が起きていると思います。大企業に勤めれば安泰という考えではなく、起業をして自分の会社を持つという選択をされる方も増えています。 それは、自分らしい働き方というものを求めた結果だと思います。

ずっと組織にいるという働き方ではなく、まさに「リーダー・イン・ミー」と言いますか、「自分の人生の舵は自分で取るんだ」という、そういう主体的な働き方をする時代が始まっているのではないかと感じています。

そうした生き方を選択される方々にとっては、『7つの習慣』や「フランクリン・プランナー」が、とても役に立つはずです。

吉田穂波

産婦人科医師/医学博士/公衆衛生修士

現在、医療保健分野の研究・教育施設である国立保健医療科学院において、研究者の育成、災害時の母子保健システムに関する研究、ボトムアップで政策提言ができる環境作り等に貢献している。

また、妊産婦救護トレーニング普及、コミュニティ防災事業における助産師との協働、イギリスやアメリカなど諸外国との共同研究や、災害分野の政策提言、ガイドラインの作成に関わるなど国際的に活躍し、世界の母子保健向上に尽力している。4女1男の母。

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