第10回:
四つの側面から目標を設定する

通常仕事の中で、目標を設定するときは、会社から与えられた目標や自分なりの役割の中で、「きっとこういうことを会社は要求しているに違いない」と考えて目標設定をされることでしょう。

しかし、目的を明確にしないままの目標設定や、周囲の人たちとの人間関係を無視した目標設定、また、長期視点や効果性を欠いた目標では、かえって、矛盾を生じてしまい、良くない結果を導いてしまうことがあるようです。

ダニエル・ピンクも「他人から課された目標―売上目標、四半期の収益、共通テストの特典など―は、ときに危険な副作用を起こす場合がある」と述べ、さらに、目標設定が、倫理に反する行動を助長するおそれがあることも紹介しています。

フランクリン・プランナーでは、目標を設定する前に、ミッション・ステートメントや価値観の明確化によって自分自身の軸を明らかにしたあとに、それを具体化するために、目標を設定するというプロセスを紹介しています。

とはいえ、多くのビジネス・パーソンのビジネス上の目標は、程度の差こそあれ、ほとんどの場合会社や上司から与えられたものになります。

コヴィー博士も、会社から与えられている、「打ち上げを五%伸ばす」「職場内の士気を高める」といった目標に対し、「なぜ」「なぜ」「なぜ」と問いつめていくと、ほとんどが、「もし、それをしなければ職を失うからです」「今の段階で達成しないと大変な問題になるからです」といった悲観的、外的なものになるようです。さらに、「目標を設定しても、それが達成できなかったら失望するし、仮に達成できたとしても、それが単なる幻想にすぎないことが分かればやはり失望してしまう」とし、目標を設定したがらない人も多いといいます。

それでは、どのようにすれば、意義ある目標を設定することができるのでしょうか。

ひとつは、あなたのミッション・ステートメントや価値観とマッチするところを見つけ出すことです。多くの企業は、社員やスタッフの経済的側面や肉体的側面のみしか見ていないため、目標自体がめったに深い動機を引き出すことはありません。

私たちが情熱を持って取り組みたいと心から思うには、人の持つ四つの側面(生きること、愛すること、学ぶこと、貢献すること)すべてを満たしてこそ、生まれます。目標を会社から与えられているにしても、その目標がこの四つの側面から見て、満たされるものなのかをしっかりと考える必要があるのです。

前述の『7つの習慣 最優先事項』では、人の持つ四つの側面と照らし合わせて考える方法を推奨しています。

あなたの目標が、「売上五%伸ばす」であったとすれば、

  • 肉体的:この目標を達成することで、賞与はどうなるか、来期のポジションにどのような影響を与えるか
  • 知的:この売上を伸ばすことができたとき、新しい知識やスキルを身に付けていることはあるか
  • 社会・情緒的:お客様やパートナーとの信頼関係はどのような関係になっているか、それ以外の人との新しい信頼関係を築くことはできるか
  • 精神的:この仕事は原則に基づいているか、心の底から達成しようと願っていることか、自分の価値観と一致しているか

といったように、四つの側面から考えてみましょう。

そうしたプロセスを経たのちに、「売上を伸ばすことで、成長という充実感を得ることができ、しかも昇給もある」といった動機に裏打ちされた目標として認識することができるかもしれません。