第17回:
「取引」から「協力」の時間管理へ

プロジェクトを動かす中心人物になったり、チームのリーダーになったりすると、時間管理は、一人で行うものではなくなってきます。

つまり、チームメンバーやプロジェクトメンバーがそれぞれのリソースである時間を有効に活用して、チームとしてより大きなことを成し遂げなくてはなりません。

そうなると、パラダイム自体を変えなければならなくなります。それは、「取引」というパラダイムから「協力」というパラダイムへの変化です。

従来の時間管理の中では、相手とのコミュニケーションは「取引」的なものが中心でした。何かを誰かに頼むとき、それは何らかの取引をもって行われるということです。

たとえば、「例の件はこちらでやっておくので、この件を早く頼む」とか「この予算で了解してもらえるならば、この仕事をお願いしたい」といったように、ギブ・アンド・テイクの精神で行われるものです。

取引の中での活動は、「○○さん、明日までにこの仕事をやっておいて。その代わりにB社の仕事はやらなくていいから」といったように、お互いがあらかじめ想定した仕事を滞りなく行うことが目標であり、それ以上でもそれ以下でもありません。

それに対して、「相乗効果」を目指す活動では、よりよい成果を得るために他者と協力し合う、すなわち、最初からお互いが変化する道を進んで選んでいるわけですから、お互いが行う仕事そのものが変化していきます。

チームメンバーやプロジェクトメンバーにおいて、取引をしていたのでは、結局発揮される成果はゼロサム(一方の利益が他方の損失になること)であり、大きくなるはずもありません。よくて1+1=2です。取引にネガティブなものが生まれると、1+1=マイナスになってしまうことすらあります。

協力してより大きなものを成し遂げようとする場合は、取引ではなく、それぞれの仕事の仕方を変えなければならないのです。

最初の段階では、いったい何がどう変わっていくのか、誰にも想定すらできないところが興味深くエキサイティングな点と言えるでしょう。

よりよい選択をするという目的のために、このような、変化を伴う「時間管理」活動を行うことこそが、私たちが目指すべきことであり、第Ⅱ領域活動の本質とも言える活動と言えるでしょう。