個人から始める「働き方改革」実践術

5 自分のコストとアウトプットの収益を考える

日本生産性本部から発表された資料によれば、相変わらず日本の労働生産性は、ほか先進国と比較しても低いようです。

リリース記事によれば、以下のような状況のようです。

  • 2016年の日本の時間当たり労働生産性は、46.0ドル(4,694円/購買力平価 (PPP)換算)。
  • OECD加盟35カ国中20位。
  • 日本の労働生産性は、米国(69.6ドル)の3分の2程度の水準で、ニュージーラン ド(42.9ドル)をやや上回るものの、英国(52.7ドル)やカナダ(50.8ドル)をやや下回るあたりに位置している。主要先進7カ国でみると、1970 年以降、最下位の状況が続いている。
    *労働生産性の国際比較 2017 年版(公益財団法人 日本生産性本部)より

生産性が下がると、時間当たりの原価率が上昇するので、コストダウンの圧力が高まり、結果的に人件費も削減される方向に動きます。
生産性の低さは賃金にも表れており、労働政策研究・研修機構の資料によれば、製造業における2014年の時間当たり賃金(購買力平価換算)は, 日本を100とすると、アメリカが122、イギリスが110、ドイツが171、フランスが127となっており、日本は各国の水準を下回っているようです。
*独立行政法人 労働政策研究・研修機構 国際労働比較(Databook of International Labour Statistics)2016より

昨今、「人材」は「人財」と呼ばれることが多くなり、「人」がもっとも重要であるとの認識が多数を占めるようになっていますが、経理上、人件費は「経費」であり、需要と供給のバランスを考えれば、上記のデータのように、労働生産性の高い国が、高い賃金を得る結果となっています。

「人」についての費用は、賃金が大部分ですが、実はそれ以外にも多くのコストがかかっています。賃金以外にも、交通費や経費、福利厚生費用や年金、社会保険、教育費など、さまざまなコストがあり、一般には、給料の2倍はかかっていると言われます。
商品原価のように、表にはあまり出ないので意識することは少ないですが、ビジネス・パーソンとして、自分自身のコストを明確にして、今日一日、「自分のコストはいくらで、いくらのアウトプットを出さなければならないのか」を考えるのは、時間管理の観点からいえば、非常に重要なことです。

たとえば、年収500万の人がいた場合、さまざまな間接経費を含めれば、1,000万円にはなります。
年間240日の労働として単純に割っても、1日41,666円です。ですから、1日4万円の利益しか生まない仕事をやっていたら、赤字ということになります。
さらに、会社の中には、管理部門やオペレーション部門など、利益を生まない人たちもいます。そうした人たちの分まで含めれば、プロフィット部門にいる人は、さらに、その1.5倍以上の収益が求められます。
ナレッジワーカーとして、確実に毎日「1日10万円の付加価値」を生み出していると断言できる人は、なかなか少ないでしょう。

経営側としては、こうした直接原価ではないコストは、「ABC (Activity-Based Costing:活動基準原価計算)」※などの手法によって、明確に管理しているケースが多いのですが、ビジネス・パーソンの意識としては、まだまだ低いのが現状ではないでしょうか。
※ABCは、ロバート・キャプランとロビン・クーパーが提唱した原価計算方法で、商品を顧客に届けるまでに、さまざまな間接費を、商品やサービスのコストとしてできるだけ正確に導くための考え方。
サプライチェーン上の無駄削減やプロセスのリエンジニアリングにつながる。
ビジネスのスタイルや職種によっても異なりますが、収益性をあまりに短い時間単位で考えてしまうと、「今日を犠牲にして大きな収益を目指す」ようなチャレンジができにくくなりますので、できれば月単位や四半期単位でビジネスプランを考え、そのうえで、毎週、毎日のタスク・プランニングへと落とし込むことができれば、毎日の活動も大きく変わってくる可能性があるでしょう。